アプリ企画とは、スマートフォン(iOS/Android)向けネイティブアプリケーションの構想からリリース、運用までの設計図を描く業務です。Webサイトとの最大の違いは、ユーザーの端末にインストールしてもらうというハードルがある点です。
単に情報を閲覧させるだけでなく、プッシュ通知、位置情報(GPS)、カメラ、ヘルスケア連携といったスマホ固有の機能を活用し、ユーザーの生活の一部として定着させる(リテンション)ための仕組み作りが求められます。また、App StoreやGoogle Playといったプラットフォームの規約に準拠した企画であることも必須条件となります。
「Webサイトが見にくいからアプリにする」といった安易な動機でのアプリ開発は、開発費の無駄遣いに終わることが多々あります。アプリは開発コストがWebの数倍になることも珍しくなく、さらにダウンロードしてもらうための広告宣伝費もかかります。
ディレクターには、「なぜWebではなくアプリなのか?」というROI(投資対効果)の観点での厳しい問いに答える責任があります。「オフラインでも使える」「プッシュ通知で再訪を促せる」「動作がサクサク動く」といった、アプリならではのユーザーメリット(UX)を明確に定義できなければ、ユーザーはすぐにアプリを削除(アンインストール)してしまいます。プロジェクトの投資対効果を最大化するために、アプリ独自の価値を設計できるスキルは極めて重要です。
実務において最も注意すべきは、Apple(Human Interface Guidelines)とGoogle(Material Design)が定めるデザインガイドライン、および審査ガイドライン(Review Guidelines)の存在です。
アプリ企画力を高めるには、AppleとGoogleの公式ガイドラインを一読することをお勧めします。すべてを暗記する必要はありませんが、「OSとして何が推奨され、何が禁止されているか」の思想を知ることは、デザイナーやエンジニアとの共通言語になります。
また、日頃から自分が使っているアプリについて、「なぜこのタイミングでプッシュ通知が来たのか?」「なぜこのアプリは毎日開いてしまうのか?」を分析する癖をつけましょう。優れたアプリは、ユーザーを習慣化させるための心理的なフック(仕掛け)が巧みに設計されています。