リサーチとは、企画立案の前段階において、市場環境、競合他社、ユーザー心理、技術トレンドなどの情報を収集・整理し、プロジェクトの方向性を定めるための判断材料を集める業務です。
「3C分析(Customer/Competitor/Company)」や「PEST分析(政治/経済/社会/技術)」などのフレームワークを用いてマクロな視点で市場を捉えることや、アンケートやインタビューでミクロなユーザー心理を探ることなど、手法は多岐にわたります。共通しているのは、不確実な未来のプロジェクトに対して、客観的な事実(ファクト)という「地図」を用意することです。
コンピュータの世界に「Garbage In, Garbage Out」という言葉がありますが、これはWebディレクションにも当てはまります。間違った前提情報(Garbage In)をもとに企画を立てれば、どれだけ優秀なチームが制作しても、間違った成果物(Garbage Out)しか生まれません。
「たぶんユーザーはこれを欲しがっているだろう」というディレクターの独りよがりな思い込みは、プロジェクト最大のリスク要因です。リサーチによって思い込みを排除し、「事実」に基づいた戦略を立てることで、クライアントを説得できるだけでなく、リリース後の失敗リスクを最小限に抑えることができます。
実務で若手ディレクターが陥りやすいのが、「とりあえず色々調べてみます」と言って、目的もなくネットサーフィンをして時間を浪費することです。 リサーチの質は「仮説」で決まります。
このサイクルを回すことがリサーチです。ただ情報を集めるだけの「収集」と、答えを出すための「調査」は似て非なるものです。
優れたリサーチャーは、デスクに座っている時だけでなく、24時間アンテナを張っています。 「なぜあの店に行列ができているのか?」「なぜ電車の中吊り広告からQRコードが消えたのか?」といった日常の些細な変化や違和感に気づき、「なぜ?」と検索する癖をつけてください。
また、Web上にはない情報(一次情報)の価値を知ることも重要です。時にはPCを閉じて、実際の売り場に行ったり、ターゲット層の知人に話を聞いたりする泥臭い行動力が、ネット検索だけでは得られない決定的な差別化ポイントを生み出します。